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シャイニン・オン [昔話]

尼崎の商店街の 国道2号線を挟んだ反対側。
路地裏がラブホテル街になっていて、人通りもまばらな裏通りがある。
そこのビルの1階を間借りして 店を始めたのは21才のときだった。

銀行も国庫も、21の若造に一千万を超える金を貸してくれるワケもなく、
名義を貸してもらうために辛い日々を過ごしたのは、それだけ自分の店を持ちたかったから。

今となっては、何てバカで計画性のない事をしたんだろうと思う。

若さなんでしょうね。


それでも当時は真剣だった。

忙しくなって会えなくなるのと、多額の借金を抱えることになったんで、
当時付き合っていた彼女に「他に女ができた。もう会えない」と言って分かれた。

アパートも格安物件に引っ越した。
トイレと流しはあったが、1階で昼間でも薄暗く、電気を点けないと生活出来ないが、
昼間は店だから問題無かった。





店の名前は「Petit Tomato」

夜勤明けのタクシー運転手や、近くの証券マン、団地の主婦層に照準を合わせ、
早朝開店、ランチメニューとパンメニューに重点をおいた、席数20程度の小さな店。

もちろん、友人が長居できるための くつろげるカウンターも作った。



オープン当日、モーニングサービスだけで50杯を越えたことに気を良くして、
サービスランチのトンカツは多めに準備することにした。

イーゼルに黒板をセットし、従業員の女の子にランチの絵を描かせ、
20人前のトンカツと、一玉分のキャベツを千切りにし、付け合わせにモーニングで残ったポテサラ。
ワカメスープの準備をした後、ランチプレートを調理場いっぱいに広げ、キャベツを盛って準備万端!
後はオーダーが通り次第、トンカツ揚げればイイだけにする。



が・・・

14:00までに通ったサービスランチのオーダーは2つ( ̄Д ̄;)


証券会社の女性社員や近所の主婦であふれかえったランチタイム・・
客が注文するのは、オープントーストやサンドイッチ等のパンメニューと軽食だけ・・
食後にはコーヒーじゃなくて、ソフトドリンクやデザート・・

( ̄Д ̄;)ヤメテ・・


厨房にもう1人入ってもらったが、いっぱいに広げたプレートが邪魔で仕事になんないから、
キャベツを盛ったままのプレートをゴミ箱に放り込んだw

もうヤケクソ(笑)


それでも料理を出すのが遅れる。

順番を間違える。

待ちかねる客。

外にも長蛇の列。

怒って帰る客・・・




はい。

トンカツ定食でワタシの店は終わりました。。。。

二日目からのランチタイムは楽勝です。
なんせ10人も来ないんですからww


モーニングサービスが終わりかけの10:30からは来客もまばらで、
店内に居るのはワタシと女の子だけ。という事が多かった。

女の子達をカウンターに座らせ、ワタシは内側にスツールを持ち込んで座り、
サイフォンに残った酸っぱいコーヒーを、3人で分け合って飲んだ。

そんな静かな店内に、有線放送からよく流れてきたのがこの曲。





分かれた彼女のことを思い出し、「孤独さ俺もその1人」の歌詞に胸が痛んだ。





あれから30年近く経ち、何気なくつけたAMラジオからこの曲が流れてきて、
あの頃の事が鮮明によみがえってきた。

カウンターの中から見える外の光景

壁紙の色

サイフォンに残ったコーヒー

湯気を出すポット

静かな店内

ダウンライトに照らされた床

出窓に置かれたステンドランプ・・・


まるで映像が頭ン中で流れた様だった。

音楽ってスゴイね。
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